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どんどこあさばヒストリー

~地域ぐるみの地産地消ビジネスの実践に向けて~

有限会社どんどこあさば

  はじめに

どんどこあさば外観「どんどこあさば」は、平成13年10月に旧浅羽町(現袋井市)の有志19名が出資して設立した有限会社です。メンバーは農業などの自営業者会社員、主婦などさまざまで、メンバーの過半数は女性が占めています。
 会社設立から6年、当初「まるごと豆富」で始まったわたしたちの挑戦は、地域の皆様やお客様、行政などの後押しで、平成17年4月には農場レストランを併設した地場産品の販売加工施設を新設し経営するに至りました。
なぜ、わたしたちが地産地消ビジネスに取り組むことになったのか、どんな夢を描いているのか、ここまでに至った経緯をお伝えしたいと思います。

  浅羽(あさば)ってどこ?

黒大豆畑 平成の大合併で平成17年4月に袋井市と合併した旧浅羽町は、静岡県の西部に位置し、遠州灘に面した温暖な気候の町です。地域の人口は約2万人、地勢はおおむね平坦で総面積2850ヘクタールの半分以上、1530ヘクタールを田畑が占める農村地帯です。また、近くには浜松市や磐田市、掛川市などがあり、これら都市部のベッドタウンとして人口増加率が高く、比較的住民年令層が若い町です。東海道新幹線や東名高速道路にも近く交通の便の良さから工場も多く進出しています。
 しかしながら、浅羽という地域はもともと観光資源が乏しく、15年ほど前に日帰り温泉(和の湯)ができるまで、観光人口はわずか9万人で県内ワースト2位でした。車で30分程の距離にある浜松市の方でさえ「浅羽ってどこ?」と聞かれることがしばしばです。
 産業面では地理的な優位性もあって戦後の高度成長期からバブルがはじけた20年ほど前、道路や公共施設は整備され、田畑は土地改良で広い区画となり機械化され、商工業も時代とともに発展してきました。でも、もうかなり前に右肩上がりの時代は終わりました。国家財政の破綻とグローバル化による世界を相手にした価格競争、弱肉強食の時代は、地域の自営業者にとって大変厳しい状況です。もちろん地域住民にとっても、企業のリストラや少子高齢化、これに伴う年金問題など将来に対する不安は募るばかりです。

  顔が見えない農業の衰退

大豆収穫風景 浅羽町商工会が平成10年に行なった地域資源調査では、住民の約8割が町の地域資源を田園風景と答えました。それもそのはず、浅羽地域の面積の4割(1120ヘクタール)を田んぼが占めているからです。地平線まで広がる田園風景は私たち住民にやすらぎを与えてくれる大事な財産です。もちろん産業としても、米、小麦、大豆などの穀物類などは県内有数の生産高がありますし、クラウンメロンというブランド名で有名なマスクメロンは全国で第1位(袋井市)の生産高を誇っています。
 ところが、大量生産、大量消費の流通システムの中で、工業製品と同様にそのほとんどが価格競争に揉まれながら大消費地へ出荷されています。全国の消費者には当地で生産されたことなど知る由もありません。そして、いつのまにか農業者は高齢化し、4割にものぼる稲作の生産調整と諸外国からの低価格農産物の流入が拍車を掛けて農業従事者が大きく減少し遊休農地が増えつづけているのが実態です。

  どんどこあさばの母体「まちおこし協会」

きのこ踊り 旧浅羽町では、平成10年2月に「浅羽町まちおこし協会」が設立されました。当初の会員数は約84名、内訳は農業者(20)、商工業者(28)、会社員(15)、主婦(5)、学生(1)、議員(6)、企業(10)など様々です。設立に際しての会員募集のキャッチコピーは、「あなたがやらなきゃ誰がやる」。それまであたりまえだった行政まかせのまちづくりではダメだとやっと気づいた頃でした。行政からの助成を受けていますが、組織の肩書きをはずしていただき、「やりたいことをやりたい者同士が集まってやる」をモットーに事業を行なっています。
 現在は、①ブランド部会(特産品開発とPR)②イベント部会(イベントの企画運営)③農園部会(貸農園の運営)④景観部会(在来草花の保存育成)④ストーリー部会(町の長期構想と歴史調査)に分かれて活動しており、このブランド部会から生れたのが「どんどこあさば」です。

  「まるごと豆富」生みの親との出会い

まるごと豆富 「どんどこあさば」の出発点であり現在の主力商品でもある「まるごと豆富」が生れるきっかけは、町外出身のおふたりとの出会いにさかのぼります。
 ひとりは千葉県出身の金坂ただしさん。千葉県産の黒大豆を浅羽に持ち込み、丹波の黒大豆に負けないものにしたいと取り組まれている方です。もうひとりは、東京で貿易商をされていた浅井昂さん。浅井さんの紹介でおからを出さない豆腐製造設備に出会うことができました。
 その頃、まちおこし協会のブランド部会では、町内外のイベントを中心に、自前で開発した地酒(あさば一万石)をはじめとして地域で生れた特産品(手づくりソース、子メロン漬、金山寺みそなど)のPRを行なっていましたが、地元に特産品を販売する施設がないため、販売額も知名度も思うように上がらず苦戦していたところでした。原料の大豆は転作作物として豊富にありますし、金坂さんが持ち込んだ黒大豆もあります。もちろんこんなチャンスを逃す手はありません。
 さっそく、まちおこし協会の仲間たちに提案し、販売体制を整えるためにまるごと豆腐研究会をひとり3万円の出資金で組織することになりました。こうして「まるごと豆富」は誕生しました。

まるごと豆富工房  まるごと豆富の特徴

 まるごと豆富はその商品名のとおり、おからを出さない大豆をまるごと使った製法のとうふです。おからの成分がまるごと入りますので栄養価が高く、食物繊維、レシチン、サポニン、イソフラボンを豊富に含んでいます。しかも産業廃棄物であるおからを出さないエコフレンドリーな製品であるとともに、消費期限も8日間と従来品と比較して長いことも特徴です。
 まるごと豆富の製造工程は、①生の大豆を超微粉末にする。②水を加え蒸気釜で加熱して豆乳にする。③ニガリを加えて冷却する。という単純なものです。超微紛末の粒度数にバラツキがあると豆腐の食感にザラつき感が残ってしまう問題や、蒸気加熱する際の温度管理が難しいなど、食品機械メーカーの技術に依存している部分も大きいのですが、当地で生産される低農薬で滋味深い大豆そのものの品質がこの豆腐にとって重要な部分を占めています。

  10ヶ月間の試験販売

 さて、浅羽ブランドの中核を担える魅力を持った豆腐はできたのですが、ここで問題となったのは売れる商品づくりです。私たちは豆腐づくりの素人ですし、特別な販売チャネルもありません。そこで、まずは地域の消費者に認めてもらい買っていただけるようになるまで試験販売をすることになりました。
 こうして、平成13年2月に始めた、豆腐の委託製造と宅配による週1回の販売は12月のとうふ工房開業までの10ヶ月に及びました。この間集められたお客様のたくさんの声、そしてそこから学んだ「地産地消」の大切さは売れる商品づくりの大きな支えになっています。

  地産地消の実践に向けて

 地産地消…地域で生産されたものを地域で消費する。
 かつてあたりまえだったことが今ではかなり難しい世の中になりました。たとえば、豆腐に使われる国産大豆はわずか18%だそうです。その中でもその地域で生産された地豆100%のものとなるとかなり少なくなります。
田んぼの風景1食の安全性が厳しく監視されている昨今でも、スーパーで買物するときには、ついつい値段で選んでしまいます。
 こんなふうに、現在の食の問題も、そして環境の問題も、結局はつくられている場所と消費されている場所が離れすぎているところから生れているのではないでしょうか。ひとつの地域の中でせめて食に関してだけでも自給自足できればきっと今より暮らしのあり方が豊かになるに違いありません。
 ()どんどこあさばは、有限会社でありながらその出資者は住民の有志で構成されています。先に紹介したまちおこし協会と同様に、「わたしがやらなきゃ誰がやる」の心意気で地産地消をコミュニティビジネスとして成立させるための挑戦がはじまりました。

社長 安間啓一  コミュニティビジネスへの挑戦…()どんどこあさばの設立

 平成13年10月、ショッピングセンターの空き店舗を借用してとうふ工房を開業するために有限会社どんどこあさばを設立しました。資本金は435万円(平成23年2月現在 1855万円)。まるごと豆富研究会のメンバー19名が新たに出資して出来た会社です。代表取締役には、これまでずっとこの事業をリードしてきた安間啓一(54才)が就任しました。安間は、町内でも有数の大規模農家で、若いながらも町の農業振興の中心的役割を果たしてきました。毎年、町内の小学生達にお米の作り方を教えていますので、子供たちからお年寄りまで顔が知れた町内の有名人です。 
開業資金は、豆腐製造設備と店舗内装資金などおよそ4000万円、全額を金融機関からの融資で資金調達しました。もともと地域を元気にしたいという目的で集まったメンバーたちにとって、この選択はまちおこしというボランティア活動からビジネス事業への転換を意味するものとなり、大きな決断を必要としました。

 そして、12月には念願のとうふ工房を開業し、店頭販売のほか、生協や農協などとの取引も始まりました。もちろん、これまで続けてきた宅配も継続し、数え切れないほどのイベントへの出張販売もこなしスタッフも出資者も一丸となっての船出でしたが、残念ながら計画通りの売上には届かず、第1期は減価償却費が響き大きな赤字決算となってしまいました。

  失敗しないための仕組みづくり

 コミュニティビジネスは、地域の人々が地域に眠っている資源(原材料、労働力、技術力など)を活用して行なう地域密着型ビジネスで、利益の追求だけでなく地域が抱える様々な課題の解決をめざすものです。これに対し、企業は効率や収益性を重視したグローバルなビジネスを展開しています。このような企業の活動は、より良い製品やサービスの提供に貢献していますが、反面、地域固有の文化や経済システムを破壊してしまうこともあります。
 それでも、ビジネス事業をはじめた以上、失敗は許されなくなりました。コミュニティビジネスとしての役割を果たしながらも、地域資源を最大限に活用した失敗しない仕組みづくりが必要となりました。

もくもく手づくりファーム  モクモク手づくりファームに学ぶ

 実は、私たちには手本としてきた会社があります。三重県阿山町にある「伊賀の里モクモク手づくりファーム」です。昭和62年に開業して以来、伊賀豚を使った手づくりハムの商品化に始まり、地ビール、パン、パスタなどの工場やレストラン、温泉などを次々に設置し、今では食と農をテーマにした三重県内有数の観光拠点に成長しています。 私たちは、20年以上前からたびたび視察に出向き、たくさんのヒントをいただいてきました。優秀な学生が農業をやりたくて次々と集まり、ショップやレストランでは若い女性スタッフが生き生きと接客する姿を見るたびにうらやましさと、自分たちもやってみたいという気持ちが沸いてきます。

  その名もアグリチャレンジャー

農産物直売所おかって市場 その後、「どんどこあさば」は、平成15年1月から商工会で運営していた地場野菜の直売所の経営を引継ぎ、わずか30坪のスペースですが1日の来店客数も平均で約600人、売上も30万円程度にまで業績は順調に伸びてきました。
 そして、農場レストランを併設した新たな特産品販売加工施設建設計画に対して、農林省のアグリチャレンジャー支援事業の認定もいただき、平成17年4月に現在の施設を整えることができました。やっと本来の目標である農業を機軸としたまちづくり、その名も「アグリチャレンジャー」としての体制が整いました。

わたしたちの取り組み

わたしたちが行っている取り組みは大きく分けて4つあります。
➀青果物の生産管理
 出荷農家で組織した生産者の会とともに、生産品目と生産時期の調整、身体にやさしい栽培方法の統一化、生産履歴添付に取り組んでいます。
➁穀物類の契約栽培と販路開拓
 買取りを条件に、指定した栽培方法を徹底していただいています。おいしくて安全、安心な商品の供給体制をつくり粉砕加工や商品開発を行うことで地域内だけでなく都市部への販路開拓を目指しています。
➂素材を生かした加工食品開発あぐりレストラン陽だまり とうふ、だんご、和洋スィーツ、惣菜など、米・麦・大豆の素材を生かした商品開発に取り組み、地場農産物専門の食品製造業者としての役割を担っています。
➃農場レストラン
 地元の食材を生かしたおいしくて身体にやさしい料理メニューづくりに取り組み、バイキング形式で召し上がっていただいています。また、レシピや食材の生産履歴の開示、食農イベントを開催しています。
 これらの取り組みは、もちろん立派な施設や農産物があることだけで成立するものではありません。たとえできたとしても、ビジネスとして採算があわなくては継続することができません。地産地消ビジネスを実践することはまだまだ厳しく、多くの方々の協力や応援をいただきながら日々試行錯誤を繰り返しているのが現状です。

500万本のコスモス畑全国の田舎が元気になれますように

 どこにでもある農産物や田園風景かもしれません。それでも、石ころだって磨けば輝くことができます。ましてやそれが宝石の原石だったら…。
 人がそれぞれ違うように、地域にあるたくさんの資源もここにしかない魅力を持っています。あとは、これらの資源を磨き上げて本物の魅力を導きだせるかにかかっているのではないでしょうか。
人と地域が一体になって、このビジネスに取り組むことでオンリーワンのまちづくりと産業の創出ができると信じています。
 暮らす人も訪れる人も楽しく過ごすことができるまちに「あさば」がなれますように、
 日本中の田舎が元気になれますように、
どんどこあさばは、これからも“どんどこ”“どんどこ”進んでいきたいと思っています。


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